オフィスに戻ると皆も同じ疑問に悩んでいた。


「支店長、真矢さんご苦労様です。どうでしたか?」

 課長が心配そうな顔をしている。


「大丈夫だ。荒井会長も寛大に許して下さった。真矢さんの力だな?」

 大輔が、皆に報告した。


「良かったぁ」

 皆ほっと胸をなで下ろした。



「でも、どこに行っちゃったのかな?正しい見積書?」

 課長が腕を組んでいる。


「どこ探しても無いですよ」

 亜由美がため息をつく。


「真矢、いつ入れ間違えたのよ? 手品じゃないんだから?」

 奈緒美が真矢を見る。


「それが分からないのよ」

 真矢も眉間に皺を寄せた。


「まあ、間違えた見積書を、すぐにシュレッターに入れなかった私も悪かったわ」

 奈緒美が申し訳なさそうに、椅子に座った。


「そもそも、入力しミスした私の責任よ。今後気を付けます。ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした」

 真矢が頭を下げた。


「え~。真矢さんが入力ミスをなくすのは無理ね。大丈夫よ、私がばっちり確認するから」

 奈緒美がガッツポーズすると、皆に笑顔が戻った


「とにかく、不要な書類の始末をする事と、すべて再度確認の徹底をしよう」

 大輔が厳しい表情で言った。


「はい!」

 皆が返事をした。


 梨花は黙って皆の様子を見ていた。


 皆がそれぞれの仕事に戻ると、ユウが真矢を手招きして廊下へ呼んだ。


「あのさ、間違い見積書を梨花さんが持って行くのを見たのよね」

 ユウが廊下の壁に寄り掛かって言った。

「それ、本当?」


「処分してくれるのかと思って、声もかけなかったのよ。真矢どうする?」

 真矢はしばらく考えた。


「もう少し様子みましょう」


「真矢がそう言うなら任せたわ」


 ユウは真矢の肩を軽く叩いた。