大輔は真矢を助手席に乗せ支店へと車を走らせた。

「支店長、申し訳ありませんでした」

 真矢が済まなそうな顔で頭を下げた。


「俺は何もしていないよ。対処できたのは君の力だよ」

 大輔は真矢を助ける為に着いて来たのに、結局何も出来なかった事が悔しかった。

 支店長としての力の無さを思い知った。

 それと同時に真矢の仕事への愛情の強さと、人としての暖かさを感じていた。

 真矢、が自分みたいな男を好きになる訳がないと思った。


真 矢の表情を見ると、窓の外に目をやり何か考えているようだ。

 真矢は今何を考えているのだろう? 

 真矢に何て声を掛ければいいのだろうか? 


 ユウの言っていた『焦らず時間をあげて』いったいどう言う意味なのだろうか?


 しかし、大輔は今そんな事を考えている場合では無い事に気が付いた。


「どこで見積書入れ間違えたんだろう?」

 大輔と真矢は同時に言った。



「俺が印鑑付いた時には確かに正しい物だったし、ミスの見積書には印鑑無かったぞ」


 大輔が不思議に思いクビを傾げた。


「確かにそのまま封筒に入れたんだけど…… 正しい見積書何処に行っちゃったんだろう?」


 真矢も首を傾げた。



「でも、郵送する時に確認していなっかた私がいけないんです。そもそも間違えて入力する事がいけないんですけどね。」

 真矢はため息をついた。



「もう、そんなに自分を責めるな。おまえのドジは直ぐには治らんよ。治さなくていいよ。そのままでいい。とにかく確認不足が問題だ」

 大輔は力強く言った。



「それは褒められているんですか? それとも諦められているんですか?」

 真矢は複雑な表情で大輔を見た。



「どっちでもない…」


 大輔は続けたい言葉を飲み込んだ。



 真矢も少し首を傾げたが、それ以上聞いてこなかった。