風と今を抱きしめて……

　食事の片づけをしながら真矢は、入院費を返していない事に気付き財布を取りにキッチンを出ようとしたが……

「なんかおじちゃん変だよ。こっち来て。」

　陸が真矢の手を引っ張った。


　リビングのソファーに大輔が横たわっている。

　頭に手を当てるとすごい熱だ。


　きっと陸の熱が移ったのだと真矢は思った。



　真矢は急いで大輔のネクタイを外し、ワイシャツを脱がせソファーに寝かせた。

　水枕で大輔の頭を冷やし、熱を測る。
　
　三十九度もある。



「陸、前のコンビニに氷を買いに行ってくるから、おじちゃんを見ていてね。絶対にピンポンなってもドアを開けちゃだめよ。頼んだからね」


　真矢は、陸に言い聞かせた。


　陸は、大きくうなずいた。



　真矢は急いでアパートの前のコンビニで、氷、オレンジジュース、下着など買いアパートに戻る。


　十分もかかってないが、陸に留守番をさせたのは初めてだった。