風と今を抱きしめて……

 仕事を定時で終わらせ、真矢は一度アパートに戻り支度をして急いで病院へ向かった。


「陸、お待たせー」

 と病室に入った。


「待ったわよ。熱、大丈夫そうよ。早く着替え出して」

 ユウが陸に食事をさせていた。


 真矢から着替えを受け取ると、ユウは慣れた手つきで陸を着替えさせた。


「もう、心配したんだからぁ」

 陸を抱きしめる。


 陸も嬉しそうにユウを抱きしめる。


 ユウは陸が気に入っているシリーズの本の読み聞かせをしはじめ、真矢に食事をするように促した。


 ユウは、陸が眠りにつくまで側にいてくれた。


「もう、退院出来そうだから大丈夫よ」


 ユウは明るく真矢を励まし、病室を出て行った。

 真矢は、どれほどユウに助けられているのかと、あらためて感じていた。

 
 だが、真矢は、いつもなら連絡するとすぐに駆けつけてくれるユウが、昨日は病院に来てくれなかった事が気になった。

 しかし、いつもと変わらないユウの様子に、何か大事な用事でもあったのだろうと思う事にした。