風と今を抱きしめて……

 次の日の朝、真矢は大輔より先に出社していた。

「病院に居なくて大丈夫なのか?」

 出社した大輔はすぐに真矢の側へ来て心配そうな顔をしている。


「病院にいれば安心ですから。昨日はありがとございました」

 真矢は頭を下げた。



 
 真矢は、昼休みになると急いで病院へ向かった。


「陸、遅くなってごめん。熱どう?」

 病室のドアを開けた。


「だいぶ下がってきたぞ。ほうらもう一口たべろよ。」

 と、慣れない手つきで陸に食事を食べさせているのは大輔だった。



「ママ、おじちゃんが買って来てくれた」

 嬉しそうに飛行機のおもちゃを抱えている。


 あれだけ知らない人から物もらうなって言っているのに、と思ったが大輔の顔を見て、真矢はまあいいかぁと思ってしまった。


「よかったね。ちゃんとお礼言った?」

 真矢は、大輔に頭をさげた


「いっぱい言ったよ」

 陸は大輔を見てニコニコしている。



「支店長、仕事は大丈夫ですか?」
 
 真矢は、少し申し訳ない思いで言った。


「おまえとは違うから、もう大手のカード会社の優待旅行の契約して来た。早いだろう? もうノルマ達成!」

 大輔は自慢げに言うと、陸とおもちゃで遊び出した。


 真矢は陸の身の回りの事をしながら、大輔とユウの遊ぶ姿を複雑な思いで見つめた。