しばらくすると、四十代半ばの落ちつた看護師の優しい声に呼ばれた。

「川上さん、診察室にお入り下さい。」


 真矢は、はっとして立ち上がった。


「ご主人も一緒にどうぞ。」

 と、その看護師が大輔を促した。


「お願いします。」

 真矢がすがるような目で、大輔に言った。


 診察室に入ると、子供がベッドの上に寝かされ点滴をしていた。

 少し落ち着いたようだ。


 サバサバした感じの女医が、机の上のパソコンのデーターを確認すると、真矢達を椅子に座るよう促した。


「陸くん、久しぶりの熱ね。ちょっと高いけど、抗生剤を点滴したから落ち着くと思うわ。肺炎の心配も無いわね。ただ、今いろんなウイルスが流行っているから、熱が下がるまで入院して様子をみましょう。その方がお母さんも安心でしょ?」

 と女医が真矢を見た。


「はい。お願いします」

 真矢が頭を下げた。


 女医が大輔に目を向けた。

「彼女、昨日から何も食べてないんじゃない? ちゃんと休ませないと、母親の方がまいっちゃうわよ」

 女医に、大輔は睨まれた。