診察室の前の廊下の椅子に、真矢と大輔は座っていた。


「もう少し早く連れてくれば良かった。母親失格だよ」

 真矢は下を向き、自分の手を強く握り合わせている。


 大輔は真矢の手の上に自分の手を優しく重ねた。


 大輔は何も言えずにただ、側にいる事しか出来なかった。



 その姿を、真矢から連絡をもらって駆けつけたユウが、廊下の影からそっと見ていた。

 しかし、真矢も大輔も気付かなかった。