大輔は車に乗り、真矢のアパートの近くにまで来ていた。

 思わず来てしまったのだが、突然じゃ変に思われないだろうか?

 何か仕事の理由を作ろうと思っているうちに、真矢のアパートの前を通り過ぎてしまった。


 ぐるぅっと一周して、また真矢のアパートの近くに居る。

 仕事の理由はなんとかなったが、具合が悪いのだから、果物かスポーツドリンクでもお見舞いを持って行ったほうがいいのかな? 

 と考えているうちに、また、真矢のアパートの前を通り過ぎてしまった。



 三度目、真矢のアパートの近くに居る。

 やっぱり突然はよくないよな? 

 でも具合はどうなんだろう? 

 と真矢のアパートの目の前を通り過ぎようとした時、アパートの階段から真矢が駆け下りて来た。



 だが、真矢の手には子供が抱き抱えられていた。



 真矢は焦っているようで、子供を抱え大通りまで走って行こうとしていた。


 大輔は、慌てて車を止め、車から降りると真矢へ駆け寄った。


「どうした?」

 大輔は真矢に声をかけた。


「夕べから熱が下がらなくて、四十度にもなっちゃって。どうしよう?」

 真矢は今にも泣きそうな顔で、子供の顔を見た。


 大輔は急いで真矢を、車の後部座席に乗せた。



「どこの病院へ行けばいい?」


「春日小児科まで」



 大輔は急いで車を走らせ、バックミラーで真矢の様子チラリと見た。

 真矢は子供をしっかり抱き、今まで大輔が見たこともない不安な顔をしていた。



 病院に着くと、大輔は車から飛び降り、後部座席から子供を抱きかかえて走りだした。


 真矢も後を追う。


 病院の受付で真矢が手続を行っている。


 その後ろで大輔は子供を抱えていた。


 かなり熱が高いようでぐったりし、息も荒い。


 子供がうっすら目を開けて大輔を見た。


「もう大丈夫だ。心配するな」

 大輔は言い、子供をしっかりと抱きかかえた。