大輔はランチルームに入り、ユウと奈緒美が食事をしている隣のテーブルに座った。

　ユウは大輔の方に目をやり、何かを確信したようにいたずらっぽい目つきで奈緒美に合図を送った。

　奈緒美はクビを横にふり拒否している。

　しかし、ユウは大丈夫というジェスチャーをし、ウィンクした。

　そんなやり取りに大輔は気が付く余裕が無かった。


「ねえねえ、真矢大丈夫かな？　夕べから熱が高いんだって。ちゃんと食べているかな？一人で大丈夫かな？」

　ユウの声が耳に入ると、大輔は、思わず箸が止まってしまった。



「熱下がったかな？　心配だわ。」

　奈緒美は本当に心配しているようだ。


「さっきライン入れたんだけど、返事が無いのよ。アパートここから近いんだけどね。」

　ユウの言葉に、奈緒美が軽くため息を着いた。


「真矢さんのアパートどの辺だっけ？」

　奈緒美が聞いた。


「ニコニコドラックの信号を南に曲がった所に新しくパン屋が出来たじゃない。そこを左に曲がって百メートルくらい行くと、スカイアパートってあるのよ。そこの三○二号室よ。」

　ユウは、部屋番号までご丁寧に説明した。


　大輔にもしっかりと聞こえていた。


　大輔は食事もそこそこでランチルームを出た。

　
　ユウが奈緒美に、ほらねぇと言う顔をした事にも大輔は気が付かず、飛び出していた。