大輔は、ランチの後から落ち着かない。

 つい真矢を目で追ってしまう。

 ユウが真矢と話をしていると気になって仕方がない。

 大輔は、真矢が廊下に出た途端を後を追った。


 その姿をユウが見て、小さくガッツポーズをしている事など気付くはずもなく。


 大輔は、真矢を呼び止めずにはいられなかった。


「あの、ちょっと気になる事を耳にしたんだけど、その、あのプライベートな事で‥」

 大輔は、言ってしまったものの言葉が続かない。


「なんですか?はっきり言って下さい。かまいませんので」

 真矢が、急いでいるかのようにせかしてくる。。


「あの、言いにくいし、言わない方がいいのかも……」

 大輔は、自分の行動に、今になって動揺していた。


「もういいですか?」

 真矢が苛立った様子で立ち去ろうとした。


「ユウと今夜約束しているのか?」

 大輔は、真矢を引き止めるように言った。


「ええ、よくご存知で。それが何か?」

 真矢は、不思議そうな顔で大輔を見た。


「余計な事だと思うが、ユウの事は信用しない方がいい。」

 大輔は、厳しい口調で言った。

 


「何をおっしゃっているのか良く解りません。私はユウを信じています」


 真矢は、きっぱり言い切った。


 大輔は、真矢の言葉に苛立ちを感じてしまった。

「いや、ユウは今夜他の女とも約束しているぞ!」

 大輔は、思わず口から出てしまった。


 真矢は、小さなため息をついた後、大輔に目を向けた。

 
「それがなにか? ユウは私の大事な親友です」


 真矢は、また、きっぱりと言った。


「えっ」

 大輔の、表情が一瞬で変わった。
 
 真矢は、また小さなため息をついた。


「ユウは、女性には興味がありません。 女子トークしにうちに時々泊りに来ますよ。お気に入りのピンクのキティちゃんのパジャマうちに置いてありますけど。いけませんか?」

 真矢が、驚いている大輔に言った。


「いや…… その……」

 大輔は、まさかの展開に言葉が出ない……


「支店長、ユウにはハメられたんじゃないですか? どちらかと言うと、ユウが気になっているのは、支店長だと思いますよ。この間カッコいいて言っていたし……」


 真矢は、意味あり気に大輔を見ると、廊下を歩いて行ってしまった。



 大輔は自分の席にもどって、深いため息をついた。


「ユ~ウ、ちょっと来い」

 大輔の低い声が響いた。


「はーい」

 ユウの明るい元気な返事が響く。


「初めて、支店長に名前で呼ばれちゃったぁ。うれしい~」

 奈緒美に言いながら、大輔のデスクへ向かった。


「…………」


 奈緒美は、何も言わずにパソコンのキーボードを叩く。



 数分後……


 ユウは、大量の資料を抱えてデスクに戻った。


「これ全部調べろ、だってー、こんなに沢山などうして僕が?」


 とユウは不満を言っている。


「自業自得」

 
 と、だけ奈緒美が表情変えずに言った。


 大輔は、また、大きくため息をついた。