ユウと大輔は車から降り、男の座っているベンチの反対側に座った。

 五時を少し回ると、真矢がビルから出て来た。


 真矢が交差点を渡ろうとすると、勝又が立ち上がり真矢の後を付け出した。

 大輔とユウも勝又の後追う。



 車で待機しいている谷口に目で合図した。


 真矢が保育園へ向かう道を曲がろうとした時、勝又の手が真矢の肩へと伸びた。


 その手をユウは素早く掴み、勝又の口を押さえ、真矢の向かう方とは逆へ歩かせた。


 建物の影に連れ込むと、そこには、谷口が構えていた。



 「彼女に何の用だ」


 谷口が、低い声で言った。


「いやちょっと、元気かな?と……」

 勝又は、半分笑って言った。

「それだけか?」

 谷口は、低い声のまま、表情変えずに言った。

 体格のいい谷口が言うと、逃げ出したくなるような迫力がある。



「まあ。金持ってそうだったから。借りようかなんて……」

 勝又の、品の無い笑いが男三人を怒らせたのだろう。


 カッとなり大輔が拳を挙げるより先に、ユウが勢いよく勝又を殴った。


 谷口が転んだ勝又の襟首を掴み壁に押し付けた。


 ユウと谷口の頭の中には、妊娠中の真矢を殴った勝又の姿が焼き付いていたのだ。


「なんだよ、お前ら! 俺は子供の父親なんだぞ。金くらい貸してくれるだろう。あんたらが貸してくれりゃあ、俺は黙って姿を消してもいいけど」

 勝又は、ニヤニヤしている。


 今度は大輔が勝又をぶん殴った。


 殴った三人の男達は、いくら殴っても、この男に自分たちの気持ちは分からないと、悔しそうな顔を勝又に向けた。