【短】恋のTrick or Treat




「俺のこと嫌いでいいから。俺と付き合って」



私の手を握った彼の手は汗ばんでいて、力強くて、あたたかい。



「俺が南川を笑顔にしたい」


「……っ」


「こう見えて俺結構まじめなんだよ?」


「………」


「こんなに好きになったの南川だけなんだ」


「……うそつき」




やっと発せたのは彼を否定する言葉だった。




「どうせ、今だけなんだよ。ただ付き合ってみたいだけの一心で、それで終わりなんだよ」



なに、言ってるんだろ私。

でも、口から出てくるのは彼を傷つけるものばかり。



「私尽くしすぎちゃうの。重いんだって。疲れるだけなんだって。私だけ思ってても全て空回りだったんだよ!?受け止めてくれないなら私は、ひとりで──」


「好きだよ大好き南川のこと。ずっと見てきたから。もう1人でいるなんて言うなよ」






彼の優しすぎる言葉に涙が溢れた。