「…先生?」



気がつくと、先生がわたしに背を向けてタバコを吸っていた。



「起きた」



「わたし寝てた…?」



タバコを左手に持ち帰ると、右手でわたしの顔に張り付いた髪を整えた。



「もう寝ない」


「もうおまえんち」



きょろきょろすると、どんどん目が覚めて、頭が冴えて、ここが冗談ではなく家から近いことを理解した。



「え、なんで家」

「おまえ寝言で住所言ってた」

「うそ!」

「いや、名簿見りゃわかんだろ」


─ あ、そうか。


「気つけろよ」



まだ21:00なのに。

先生はエンジンの止まった暗い車の中、光る時間を指差してそう言った。


確かに寝ちゃったわたしがいけないんだけど。



まだ隣にいたいって、あとちょっとだけ話したいって、思っちゃうのは我が儘なのかな。