「有馬さん、テスト監督お願いできます?」


今日はそこだけは勘弁してほしい。

が…断る理由もなく、受け入れる。



テスト3日目。

昨日一日がかりで丸つけは終わった。

今日の空き時間で平均点だして、成績つけて。

片付くはずだった。

向かう先が物理準備室から教室に変更され、扉の前で思わず立ち止まる。


「……」


しかも…よりによって、このクラス。



ガラガラガラ――――


「あれ?有馬先生になったの?」

「ああ、吉永先生、急用入ったらしい」

「えー、ラッキー!」


窓際の美月は休み明けにも関わらず疲れた顔で、朝まで勉強してたのがわかる。

テスト用紙を配りなから、美月の席に近づいていく。

テスト監督が変わったのなんて驚きもせず、落ち着いた美月は、教科書をカバンにしまい、頬杖をついていた。

…いつもは挙動不審なのにな。


「あと少しだから、がんばれよ」


思わず、声に出して。


通り過ぎた後、美月の顔が微かに上がるのを感じて、それだけで嬉しく感じるのを自覚する。



やばいな。



黒板に終了時間を書くと、号令をかけた。

「はじめ」

一斉に筆音が響き渡る。



いつもなら、得意なポーカーフェイスも今は怪しくて、とりあえず外を眺める。




近くにいるのに触れられない。





視界の隅に気配を感じながら、そんなことを考え始める。





この前のテストの比じゃなくて。





俺、相当やばいな。