“パタン”

そう、この音にわたしはいつもドキドキさせられる。

みんなの先生をひとりじめできる合図みたいな。

5限終わりのチャイムより嬉しい甘い響き。



「甘いもの?」

いきなり、先生が顔を近づけてきた。


「ていうか。なんか、甘いな」

え?


「なんかここらへん。甘いにおいする」

そう言って。

わたしの左頬に鼻をかすめる。



「…メロン?」

「あ、あの、北海道のおみやげをもらって。さっきみんなで食べてて。」


バッグの中から散らかったお菓子をバラバラと出す。

「さっき、こぼれちゃって」

「ふーん、誰に?」

「え?」

「お土産?」

「い、佐々木くん、です。」