もちろん、晴香が小学生の頃には
週末や誕生日、クリスマスには
頑張ってそれなりに手作り料理を
作ってきた。

香織が子供の頃、母親が時々
「○○パーティ」と称して
ご馳走を買ってきてくれた。

それがとても嬉しくて
いい思い出になっているからだ。

だからこそ‥
晴香の「○○パーティ」には
頑張ってなるべく手作りにした。

普段寂しい思いをしている晴香も
それを楽しみにしていてくれた。

もっともっと甘えたいという
気持ちを抑えて小さいながら
晴香も懸命に頑張っていた
ことぐらいわかっている。

もっと、幸せにしてやりたい。

もちろん、もっとそばにいてやりたい。

でも、現実の生活では
それくらいしかできなかった。

それくらいが親子でいる事を
かみ締める唯一の時間だった。

だが、香織も30歳半ばを過ぎ
仕事も責任のあるポジションを
与えられ、プレッシャーがかかり
ストレスが増える毎日‥
体力も衰えはじめ、家に帰ると
ぐったりしてしまって
何もする気にはなれない。

いつの間にか、晴香との
そんなささやかな週末の楽しみも
買い物に出かけて外食する
とう形に変化していた。

自分も楽だし、買い物に
興味を持ち始めた晴香も
喜んでいたので
それでいいと単純に信じていた。