部活は、予想を超えて楽しかった。
先輩はやさしくて、教え方が丁寧で。
梨花とのお喋りが増えて。
いろんな子とお話しして。
美香ちゃんと。晴香ちゃんと。美沙子ちゃんと。

なにより、バトンが楽しくて。
楽しくて楽しくて仕方が無かった。
授業中も放課後の部活が楽しみで。楽しみで。楽しみで。
部活が、1番の楽しみになってたんだ。
過去なんて気にしてなかった。
一番気にしなきゃいけないのに。気にしなきゃいけなかったのに。


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乙葉が小学校4年生のころ、乙葉のお父さんは事故で捕まってしまった。

車のアクセルとブレーキを踏み間違えて、歩道に突っ込んだんだ。歩いていた人が何人か亡くなり、お父さんは捕まった。
そのせいで乙葉は、4年生のころはいじめられ、避けられた。集団で。大人数で。5、6年でもそれは続き、たまたま乙葉の家の近くに引っ越してきた梨花だけが、唯一の友達だった。

梨花は誰にでも優しかった。乙葉以外の友達だっていっぱいいた。だからいじめから守ってくれるわけではなかった。けど、私と一緒にいるのを嫌がらなかった。

それは、私にとってとっても大切なことで、ずっと梨花とは、親友だと思っていた。


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香奈中は、私の小学校と、隣の小学校と、その隣の小学校の三校が集まった中学だった。

私が梨花とお喋りしていると、友達から声を掛けられた。

「もう帰る時間だよ!りんか、おとは、今日は美香たちと一緒に帰ろー!」

「「うん!!」」

昨日は晴香ちゃんとその友達と梨花と帰った。今日は美香ちゃんとそのお友達と梨花。
その毎日が楽しかった。

真っ青の空。そこに、一筋の飛行機雲がかかっていた。