「鈴原!ちょっと来い!」

はあっとため息をつきながら永瀬さんのデスクへ向かう。

「今日、早く上がれそうだからデート。
行きたいとこ考えとけよ」

小声でそう言ったあと、くるっとパソコンのほうを向いてまた首の後ろをぽりぽり掻いた。

ぷっと吹き出して笑ったら、

「なんだよ」

とギロッと睨まれた。

「なんでもないです」

どこに行こうかなーなんて考えてウキウキしながらデスクに戻ると、ちょうど私のデスクの横を通っていこうとした花がかがんで声を潜めた。

「うまくいってよかったねえ」

「へ?何が?」

「この課の全員にバレてるからね?
この前の痴話げんか、お互い告白し合ってるようなもんだったし」

ニヤリと笑って去って行く花に、言葉も出ない。

…告白?

そんなこと言ってたっけ!?

「永瀬さん、2年前から鈴原さんに夢中でしたからね。
うまくまとまって本当によかったです」

花の声が聞こえていたらしい時田さんも、パソコンをいじりながらハハッと笑っている。

…嘘でしょ?バレバレ?


「鈴原!これ日付印押せ」

「あっは、はい!」

「お前今日が何日かわかってるか?」

「わ、わかってますよ!」

「じゃあ言ってみろ。
令和何年何月何日」

「えっと…今年は令和…」

「わかってねーじゃねえか!」

「そんなにすぐ出てきませんよ!」

クスクス笑うみんなの視線に頬が厚くなっていく私に反し、何も知らない永瀬さんはふんっと小学生みたいな意地悪な笑みを見せた。



fin.