幸せな日々が2週間ほど続いたある日。

プルルル プルルル プルルル

夜10時、電話が鳴った。

永瀬さんだと確信しながらパッと画面を見たけど、登録されていない知らない番号からだった。

怪しいけど、大事な電話だったら困る。

恐る恐る通話ボタンをタッチした。


「…もしもし…?」

『もしもし、鈴原さん?』

聞き覚えのある声。すぐに顔が思い浮かんだ。

杉田部長だ。

「え…あの…なんで…」

頭が混乱している。

なんで今さらこの人から電話が来るの?

『…なんでだかわかる?』

電話越しにクスクスと笑う声が聞こえる。

「あの…どういうことですか?だって杉田部長は…」

杉田さんはふっと鼻を鳴らした。

『君の仕業なんだろ?
君が部屋に来るタイミングであの女たちが現れた。
彼女らは女から電話が来たんだと言ってたよ。
まあ、金で全部解決した。
おかげで俺はすっからかんだけどな』

さっきまでの声が一転、明らかに怒りに満ちた声に変わった。

『君が言うことを聞くならシステムの契約はこのまま進めてやる。
このために運用直前の今まで待ったんだ。
プロジェクトの損失は大きいほうがいいだろ』

背筋がゾッとする。

そんなことまで考えて、何ヶ月も水面下で復讐の機会をうかがってたの?

…ダメだ。今度こそこの人には逆らえない。

瞬時にそう思った。

この数か月の永瀬チームのプロジェクトを台無しにして、大きな損失を出して…きっと永瀬さんもただじゃすまない。