「おはよー、瑠色」

「おはよう」

おはようございます。

私は町場 瑠色(まちば るい)

ゲーム好きな中学三年生、

そして受験生でもある

私は席に座りカバンを開く

カバンの中にはスマホ、教科書、筆箱

いつも通りだ。

今日もいつも通りに一日が始まって

平凡に一日が終わると思っていたのにーー














「おい!町場!」

教室で席に座りスマホをいじっていると

廊下から私の名前を大声で呼ばれた

声がしたほうに首を傾けると体育教師である

太田 大毅(おおた だいき)が

怒りの形相でこちらに歩いてきていた

太「スマホは禁止のはずだぞ!」

相変わらず声が大きい

いやいやいや、今はどうやってこの状況を

打破するかが大事だろう?

瑠「いや、これは」

太「没収だ!」

私から言い訳も聞こうとせずに

スマホを取り上げた太田は教室から満足そうに出ていった

「あーあ、瑠色……あの様子じゃ
 しばらく戻ってきそうにないね……」

友達が私の机の周りに集まってくる

「瑠色~、残念でしたっ」

瑠「挑発してんの?」

「してないよー」

自分のスマホは取り上げられたのに

友達のスマホは取り上げられてない

その状況がさらにイライラさせる

瑠「あーあ!」

今日は最悪の日だ

そう思っていた











全ての授業が終わり掃除も終えて

帰りの会をさっさと済ませやっと帰れる

そう思っていた

すると親友である奥田 友美(おくだ ともみ)

が私の席にきて両手を合わせてお願いのポーズをとった

友「お願い!今日CDの発売日なの!」

瑠「はいはい、わかったよ」

親友の頼みはいくら私でも断れない

クレープをおごってもらうかわりに

私は親友についていった

本屋に寄り用のない私は外のベンチで待つ

スマホがないのでとても長く感じた

暇なので周囲をキョロキョロする

すると真夏にも関わらず長袖のスーツを着た

サラリーマンが目についた

えらく怒っている男に頭を下げていた

ペコペコと、とても情けなく見える

私はその様子をただただ見ていた

なんとなく可哀想だな、なんて思いながら

すると男はまだ怒っているのか大股でビルの

中に入っていく

頭を下げていたサラリーマンはカバンから

ハンカチを取り出して汗をふいた

ゆっくりとした足取りでこちらに歩いてくる

「わっ」

するとサラリーマンは私の目の前でこけた

私は立ち上がるとサラリーマンに近付いた

瑠「大丈夫ですか?」

サラリーマンは顔を上げた

その時、まるで時が止まったように感じた

その人がとても綺麗だったからだ

眼鏡の奥にある大きな瞳は少し涙で潤んでいて

とても、顔が整っていた

だがこれしきのイケメンはゲームの中でも

見たことがあるので耐性がついている

だがドキリとしたのは何故だろうか

「あっ、だ、大丈夫です……」

瑠「あ、ちょっと待って」

立ち上がり早足で立ち去ろうとしている

サラリーマンに声をかける

「な、なんでしょうか」

瑠「おでこ、擦りむいてますよ」

私はバンソーコーを取り出して

サラリーマンに向ける

「あ、ありがとう」

その人は照れ臭そうに笑った

私はその笑顔をみて思った

あ、この人好きだわ……と

これって一目惚れなのかな……?