私は幼い頃遠くに引っ越すことになった。
でも裕翔はその事を知らない。
「ばいばい」
幼い頃の君は無邪気に笑って言う。
「またね!」
幼い頃の彼は優しい笑顔で言う。
「また、明日ね!」
幼い頃の裕翔は元気に笑って言う。
でも、もう君に会うことはない。
幼い頃の私は会えないことを確信していたんだ。
何故だろう、何故確信していたのだろう。
あの手にはもう触れられないことはわかっていたのかもしれない一緒に遊ぶことすらも出来ないことをわかっていたのかもしれない。
「ばいばい」
幼い頃の私は涙ぐむ声でそう言った。
またね!また、明日ね!とかは付けなかった。もう会えないとわかっていたから、もう触れられないとわかっていたから、また会うことなんてできないと思っていた。
真実を告げないで引っ越した、裕翔の前から消えた。
そして裕翔とは音信不通になった。
高校に入学してそんなこんなで高校生活が始まった。
今、彼はどうしているのだろうか…