翌日。
ランチタイムの屋上。
昨日起きた出来事を瑠璃ちゃんに報告した。

「何それ!たった1日で展開早っ!」

驚いて、手の中の飲みかけの苺牛乳のパックを握り潰しそうになってる瑠璃ちゃん。

「つーか、気になる気になるとは言ってたけど、寝てるとこ触っちゃうとかあんた…」
「あぁ〜引かないで〜!自分でもどうしてあんなことしちゃったのかわかんないんだから〜!」

引き潮のように引いていきそうな瑠璃ちゃんの腕に慌てて縋り付く。

「ほんと、なんであんなことしたんだろ…こんなの、初めてだ…」

呟いて、俯いた。

触りたくなって触っちゃう、なんて。
一体どうしちゃったんだろう私…。
どうしてあのとき、私の理性やら常識やら自制心は揃いも揃ってどこかへいなくなってしまったのか…??

「ねぇ、歩…もっかいきくけど、ほんとに柏木のこと、好きじゃないの?」

「好きじゃないよぉ〜…」

「ん〜…あんたも大概変わってるけど、俺が好きって認めるまで待ってやる〜なんて、柏木も変わったやつだねぇ」

顔を上げて、瑠璃ちゃんを見る。

「私どうしたらいいのかなぁ」

「別に、どうもしなくていいんじゃないの?今のところ、何もないんでしょ?柏木」

「うん…昨日のことがなかったみたいにフツーにしてる。話しかけてもこないし、こっち見もしないし、何もしてこない」

「ならほっとけば?みんなには黙っといてやるって言ったんなら、言いふらされる心配はないわけじゃん?」

「でも好きだって認めるの待つって言われちゃったんだよ?待ってる人ほっといていいの?やっぱりもう1度きちんと説明した方が…」

「ていうかさ、いい機会だし、話してみれば?柏木のこと、好きになるかもしれないじゃん」

「それはない!」

「んなのわかんないでしょー、あんた柏木がどんな人か知りたいって言ってたじゃん!堂々と観察して研究できるチャンスだと思えばいいでしょ!」

「それは遠くから見てこっそり観察してるだけでよかったの!柏木と口きくことになるなんて思ってなかったんだよぉ〜…」

「とにかくもうばれちゃったんだし、関わりだって出来ちゃったんだから、いっそのこと肉食獣の檻の中に入って交流深めてきなさいよ」

「そんなぁ〜…」

肉食獣は檻の外で見てるからこそ安全なのに…。

昼休みが終わるチャイムが鳴って、瑠璃ちゃんと別れて、渋々教室に戻った。