「好きです」

そんな言葉が聞こえて、思わずドアの側に隠れてしまった。

部活動で遅くなり、外はもう夕暮れを過ぎている。

杏は忘れ物を取りに、教室まで来たのだ。

しかし、入れる雰囲気ではなかった。


「間島君のことが、好き。」

もう一度聞こえた。

誰だろう。

杏の言葉を代弁しているかのような、そんな告白だった。


(私もだよ。私も好き)


心の中でつぶやく。

何で好きになったのだろう。

消しゴムを拾ってくれたから?

隣に座っているから?

どれも違う気がした。

好き、に理由はない。

だた、好き。


今告白している女子も、間島を「好き」、なのだろう。

間島もそんな気持ちで彼女を「好き」、なのだろうか。