「っていうか、ここんとこの振りがどうしてもワンテンポ遅れんだわ・・」

「あ~そこね・・ そこ浩司さんのメインのとこだから、遅れたらマズイっしょ?」

「つーか・・ 先輩達の舞台だし、脇の俺がぶち壊しにするわけにいかねぇっしょ?」

「はっ! 自意識過剰ってんだよ? みんな先輩達を見に来てんの! お前がワンテンポ遅れたトコでファンの子は気にもとめねぇよ」

「そういうお前だって・・・」

と中の二人は笑っていた

しばらく話していたふたりは、再び音楽をかけ、練習を再開したので、俺はそっとその場を後にした

目からウロコだった

今、俺らが毎日練習しているのは、事務所の先輩のコンサートのバックダンス

ヒップホップ系の曲で、ダンスもかなり難しい・・

あくまでもメインは先輩達・・

でも、同じ舞台に立つ・・

やっとあのときの言葉の意味を理解した

この日から、俺は筋トレを欠かさなかった

ダンスって、曲の間中ずっと体を動かしている上に、笑顔・・

数分間、笑顔で全力疾走をしているくらいの体力が必要になる

そうしていくと、今まで出来なかったダンスの技が出来るようになる

そして、ダンスにはまっていった俺は、数ヵ月後、KINGの一員として、バックダンサーを卒業した

そして、そのKINGのメンバーには、あの日俺を睨らみつけた龍馬さんと、龍馬さんと笑っていた大吾さんもいた