「俺も本当はそんなことしたくなかった。でも、お前が記憶喪失になったことを知って絶望した。もうお前は俺のこと覚えてないんだなって思ったら、なにも考えられなくなった。お前がもう俺のこと忘れてしまったのならこっちだって忘れてやるって思って気付いたら、写真に写っているお前の顔を切り抜いていたんだ」


「そうだったんだ」


悠真と私はそんなに深い関係だったんだ。


「でも、だめだった。俺の中でお前は消えてくれなかった。それどころかお前は俺の前に現れた」


悠真は噛み締めるようにゆっくりゆっくり話してくれている。


「お前は俺との出会いはあの電車の中だと思っているだろうけど、ちがう」


少なくともその時はそこが悠真との出会いだと思っていた。



でも、数々の真実を知った今だからこそ本当の出会いはそこじゃないとわかる。