姫君が齢7歳になられた頃。
父君は邸にお通いなさらなくなった。
-夜離れ。
藤の上は、とても悲しまれた。

藤の上は、父君に打ち捨てられたと御思いになった。
日毎増す悔しさと恨みは、計り知れぬ。

独り寂しく御休みになっていた夜。
夢に、彼女の父が現れなすった。

『罪は、もう、消えた。戻っておいでなさい。そんな穢れた世にいては、可哀想だ。』

ああ、そうだったのね。
藤の上は少し哀しげに見える笑を浮かべられた。

『わかりました。戻りましょう。そして、いずれ、我が娘、葵も其方に置いて下さいませ………』