うっ、と言葉に詰まったようにするので、それを御覧になり、悲しげな顔をなさる。

藤一条の姫君は、桜、若草を「姫様」とは呼ばれない。
それは、御自身も姫君であり、また、それ以上に、地位が下の者に仕えられている、と言っておられるのだ。

「まぁ、今日はよう御座います。姫君。あと数日で宴が御座いますのよ。姫君も、楽器を演奏するのですよ。貴女達は、何が得意でいられますこと?」

ずらりと横に並べられた楽器を見て、桜も若草もおお、と声を上げる。

「お前、頭は宜しいらしいけれど、楽器なんぞ、弾けるのかしら。」

ふふ、と馬鹿にする様に若草が笑うのを見ていた近くに控えていた和泉の立腹と言えば………