「柚希の君、あの、いいですか?」

話していた女房が呼ばれて行ってしまったので。
女房はどうやら、柚希と呼ばれているらしい。

「私も、行かなくては………………ね。」

服装を整えて、和泉は曹司を抜け、広い邸の中を歩いていた。

(姫様………御無事かしら。あんなに御身分はお高いのに………慣れない女房勤め等、何故……………)

考えているうちに、心が打ち沈んできて、涙が零れた。

「泣かないで下さい。」

後ろから聞き慣れない声がした。
彼女には、何故だか、分からなかった。