父君が何とか口実をおつくりになって、一条邸に行かれ、式をなさったのだった。

「おお、美しく育ったな。彼の物語の赫夜姫も劣ってしまう。」

と、御落涙遊ばし、たいそう喜ばれた。

「父君、美しくても、幸せになれるとは、限りませんのよ。それに、美人薄命、私は美しいのは、嫌ですわ。はやく歳をとりたいわ。」

と、姫君ははやくも悲観的なことを仰られていた。

「藤(母君)が此処にいたら、どんなに喜んだことか。誠にいや、残念なことだ。」

本当はもっと豪華に、盛大に行いたかったのに、こんなにも慎む形となった式は、父君の御心を傷めさせた。