父君は姫君に、本邸に「女房勤め」する様にお勧めした。

表向きは、桜と若草の教育係。
普通の女房よりも待遇を良くするとの仰せだった。

本人や和泉、逢鈴は反対していたが、父君は半ば強制的に邸へ連れて来させた。

姫君は「葵」という御名を隠され、「藤一条」と名乗られた。

藤の字は母君の藤の方より由来され、一条は、藤の方が住まわれた邸が一条だったことに由来する。

父君は美しいお召し物を沢山藤一条の姫君に贈られた。
姫君のお好みに合わせた色を使われていた。

それに伴い、誰にも知らせずに、裳着(成人式)をあげさせた。