「………」

結局、誰も物語を知っている者はいなかった。

「お母様。私達、‪新しい絵巻が欲しいの。」

「絵巻は、高いのよ。もう、貴女達が欲しがった物は全てあるでしょう?」

二人は色々な絵巻を沢山所有しているので、もう、買い残す物は無い。


その頃、葵の姫君は、邸にて絵を描いていらした。
元ある物語の絵巻では無く、完全に自作なさった。

「逢鈴(あぐり)、道具を此方に持って来て頂戴。」

逢鈴は数年前に姫君付きになった女房で、和泉とも仲の良い女だった。