「最近、同じ物語ばかり読ませているけれど、飽きて来たわね。」

桜が言うと、隣に座っていた若草も頷いた。

「新しい絵巻を描かせましょうか、邸内で、一番絵の上手な女房にでも。」

「それもいいですね、お姉様。」

桜、若草両名の邸には、沢山の絵巻が所蔵されている。

二人は知らない様だが、絵巻は一つ一つ手で描いているので、高価な物である。

「こんなに女房がいるんですもの。女房の中に、一人や二人、面白い物語を知っている者はいるわ。」

桜、若草付きの女房は教養が無い者ばかりなので、知っているはずがなかろう。