しかし、その美しさも、最近、翳りがさしている気がしてならない。

藤一条尼君は臨機応変に和歌を詠んだり、琵琶の名手と呼ばれるに相応しい演奏を披露したりして、上流の姫君と言うのは、こんな者なのか、と思わせられる。

(今宵、御兄様が宴を開いて下さると仰っていたけれど………嫌ね、私はどうせ、御簾の奥に居て、賑やかな声を聞いているだけなのだから。)

宴と言うので、無理矢理両親や兄着せられた裳唐衣も、美しい話ではないが、肩が凝ってしまって割と辛い。

初めて藤一条の尼君を拝見した時、裳唐衣をお召しになって、それでも凛となさっていた。扇で隠していたお顔も、美しくあられた。