藤一条の尼君の異母妹、桜は、裳着を済ませてこの頃、とても退屈に思っていた。

幼い頃は、数多くの異母兄弟姉妹と庭に降りて遊んでいたりして、袴や衵の裾を汚しては、乳母に叱られていた。

それも、今となっては良い思い出ではあるのだが、やはり、今もそうでありたい、とも思う。

対の屋の端の方に座って、ふう、と溜め息をついて、外の景色を眺めていた。

本来、姫君は端によっては人に見られる可能性が高くなるので、いけないとされているのだが……

-桜。
この呼び名に、誇りを持っている。
美しい桜の花に喩えられるなど、嬉しい限りである。