さて、姫君を忌み嫌った北の方は、貴久がお隠れになったことを知り、たいそう驚かれ、そして悲しんだ。

それと同時に、彼が隠された原因となられた姫君に、更なる怨みを持たれた。

姫君は、御自分の曹司に引き込もられて、出ては来られない。
それも腹立たしかった。

(弟を亡くした妹を慰めるのも、女房の務め。あの娘は、何をしているのだ。)

北の方は自ら、ずかずかと長袴の裾を持ち上げて歩いて、姫君の曹司に向かった。

いきなり北の方が入って来たので、姫君はお召になっていた喪服の上に袿を一枚お召になって、対応された。