「夏葉、久しぶり」
ニコリとして元彼の尚也が近づいてきた。
「どうしてここにいるの」
私の表情は固い。
「ここに来ればいつか夏葉に会えるかと思って」
私の頬がピクリとした。
何なの。
「今日はどんなのを買うの?」
「あなたには関係ない」
私はくるりと背を向けた。
このままここにいてはいけない。
私の中の何かが黄色信号を送っている。キケンだと。
もうご褒美を買う気にはなれない。
私は出口に向かって歩き出した。
「待って、夏葉」
尚也の声が聞こえたけど立ち止まる理由などない。
立ち去る理由ならある。
私はもう会いたくなかったから。
店を出てすぐの所で尚也に肩を掴まれた。
「頼むから待って」
「どうして」
自分でも驚く程の冷たい声が出た。
「頼むから話をさせて」
尚也と視線を合わせた。
「昔話も今の話も聞きたくないわ」
尚也は大きく息を吐いた。
「じゃあ、これからの話は?」
私は目を見開いた後、目を細めて軽く睨んだ。
「なおさら、聞きたくない」
私の右肩に触れる尚也の手を振り払おうとして、手をつかまれてしまった。
「何するのよ」
「つかんでないと夏葉が逃げる」
「当たり前でしょ」