「ただいま」
 弟の幼馴染と一緒に帰宅する羽目になった。
「樹杏兄さん、おかえり」
 いつものように妹が抱きついてきた。
「高校生にもなって甘え放題?」
 苦笑して知己が言う。
「知己さん、いらっしゃい」
 ぺこりと頭を下げていた。
「いいじゃないですか。まだ一緒に寝てるとかそういうわけじゃないですから」
「さすがにその歳で一緒に寝てるのはどうかと思うさ」
 高校生にもなってと、呆れながら知己が返していた。
「ちい姫、学校の様子は?」
「ん~、やっぱり向こうとカリキュラム全然違うから、ちょっと途惑っちゃう」
「違うか」
 そう言いながらもぺたりとくっついたまま離れようとしなかった。
「琴織だったらある程度……」
 わざとらしく知己が尋ねてきた。
「あたしもそれ考えたんですけど、杏里兄さんのところのお子さんと一緒になるのはちょっと」
 やはり姪っ子に気を遣ったというところか。
 色々と聞いてくる話は、おそらく紅蓮の意思も含んでいる。さり気なく尋ねてくる知己の言葉の端々から伝わってくるのが面白くない。
「ちい姫、明日も学校だ。そろそろ休みなさい」
「え?」
 不思議そうに首を傾げていた。余計な詮索はここまでにして欲しい。
「だね。また体調崩すと悪いし。知己さん、ごゆっくり」
 それだけ言って妹は自室に下がって行った。