気がついたら菜月がこちらを覗いていた。
「緋炎さん!」
「ここ、は?」
「聖さんの店です。緋炎さんの叔父さんっておっしゃった方が助けてくれたんです」
「叔父?」
「はい。この間から会っている華弦さんという方です」
「華弦か……助かった」
 華弦と吉雄、あの二人のコンビネーションも凄い。
「報告は二人から受けたよ。災難だったね」
「師父……」
「怪我は浅い。今日はここで休んでいきなさい」
「……あぁ」
 そして菜月に部屋を出るように促した。
「ご苦労様、あれだけの妖魔、チカラ任せでは難しかったかな?」
「あぁ」
「菜月の索敵は陽光よりも正確だそうだ。守りと索敵向き。確定だよ。これで素性が分かれば最高なんだがね」
「陽光は元々……補佐と索敵。だろ?」
「そう、その通りだ。ただ、陽光の索敵も捨てがたい」
「何故?」
「菜月は正確すぎる。おおまかな情報さえ分かればいい時もある」
「大まかなのは陽光、そこから詳細は菜月、か?」
「そういうことだよ。適材適所は基本だ」
「それが俺には出来ない」
「それは信頼できるものに任せなさい。お前は策を練るほうにまわれ」
 昔からいつも言われる。
「分かってる。でも……」
「あれは揺さぶりをかけるのは病的なほどに上手い。それに乗ったお前が悪い」
「師父……」
「得手不得手だよ。ただ、それだけ」
 それだけ言って出て行く。