「どうも」
 外にいる紫苑が会釈してきた。
「紅蓮に関してひとつききたいのですが」
「何をだ?」
「何故、俺なんでしょう」
 近所の喫茶店でコーヒーを飲みながら話す。
「お前以上に上手くチカラを使うやつが他にいれば名前をあげて……」
 速攻で紫苑が指差しした。冬太と紫苑の側近、綱が同時に吹いていた。
「……俺?」
「俺じゃすでに無理なんですよ。拮抗が精一杯で」
 チカラ押しか。
「まったく、父親が甘いのか?」
「え?紅蓮の父親は……」
「阿呆か、お前たちは。俺が父親なら花蓮も連れて出てるわ」
「ですよね。ちい姫との婚約だって、それを理由に辞退させるでしょうから」
「せめてチカラの使い方くらい教えてやれ。あのままだと確実に身体に負担をかける。最悪、短命になるぞ」
「ばかな……」
 それだけ言って席を立つ。
「よろしいのですか?」
「何をだ」
「あれだけ情報を与えて、ですよ。ちい姫様は母方のご親族とはあまり……」
「母親の呪縛か。周りも周りだ。何が身内のせいでくいものになった、だ。復讐の為にあの男に近づいてきたくせに」
「それはそうですが」
「千代くらいだろう。そういう呪縛をちい姫に与えないのは」
 だからこそ千代を国外へ連れて行った。
「その、千代からの電話です。ちい姫様が慌てたようにいらしたと」
「落ち着いたら迎えに行く。あの状況じゃいくら咲枝様に話進めろと言われても進める気にならんぞ」
「その一端は樹杏様にあると思うのは俺だけでしょうか?」
「お前だけだ」
 わざと話をはぐらかしたが、甘やかしたせいだと言われれば何もいえない。
「隠すの結構難しい人なんだもん」
 後日紫苑の印象を聞いたらそう答えが返ってきた。