聖は紫苑からの情報で思わず笑った。
「とすると、話しかけた要素はいくつか思い当たると?」
「あぁ。いつものように使い魔にというのが最大。それから『我らの元ヘ』と言う言葉から推測されるのは、かなり妖魔を引き付けやすいということだ。とすると、妖魔は喰らうためにあの少女を呼んだ。それが分かったから怖がった。あとは知ってる妖魔だった」
「私の推測とほとんど変わらない。お前に聞くまでもない」
 思わず悪態を返す。
「あの少女がちい姫だと確定されるなら、話は変わってくる。あの男が己の元ヘ連れて行きたいのさ」
「なるほど。その状況も考慮せざるを得ないわけか」
「確率的には?」
「五分以下だと私は思っているよ。あれだけ他の者も改竄されているとなったら、他の者がそうである可能性が高いような気がする」
 その言葉を聞くなり、紫苑が立ち上がった。みると樹杏が誰かと話している。
「たしか、冬太さんのはずだ」
「あぁ、樹杏の『守役』の子供か」
「樹杏さん」
 話しかけるものの、こちらは無視の状態だ。
「あまりこちらと関わりあいたくないか。いい度胸だね」
「いや……支社のビルの中では何度か話したことは……おそらく無視した理由はあなただ」
「そこまで私を毛嫌いするか?あの男は」
「毛嫌いされる要因がないとでも?」
「無くはないがね」
 そしてそのまま戻る事にした。

 帰りつけば、菜月と魔青が店番をしていた。
「緋炎と陽光は?」
「出かけました」
 素っ気無く菜月が言う。
「なるほどね。おや、ちょうど戻ってきたね」
 そのあと話をする三人を見て、おやと思う。緋炎とも気軽に……いや、今までと様子が違う。
「気がつきました?ちょっと前からっすけど。まぁ、緋炎の表の顔を知ってじゃないと思うんですが……まぁ、緋炎はあなた以上に鈍いので気がつかないでしょう」
「それに一応あの子は将来を決めたのがいるしね」
「うっわぁ……ご愁傷……」
「それは緋炎にか?相手にか?」
「両方?だってお互いの意思は無視でしょう?」
 当たり前のように返してくる。
「いや、緋炎がかなり強く望んだらしい。まだ相手と話が進まなくて流動的だという話だがね」
「……俺、別の心配していいっすか?」
「は?」
「あそこまで女心分かんなくて、相手と話進んだときどうすんだろ?」
「それはお前の気にする事ではないだろう。保護者が結構厄介だからね、そうそうなことがない限り、実らないよ」
「鬼」
「私はヒトでないからね、鬼といわれても平気だよ」
「……あいつの気持ちが傾きかけてるに一万円」
 唐突に陽光が言う。
「まだ気がついちゃいないな。だけど気がついたらいっきだろうな」
 ぶつぶつと呟きだした。
「そう簡単に反故にも出来ない相手だ。まぁ、大丈夫だろう」
「なら良いんですけど。あいつ傷つくと立ち直るまで時間かかるし」
 優しすぎる子供だ。思わず昔の癖で頭を撫でた。
「俺は頭撫でられて喜ぶ趣味はないっすよ?」
「陽光、少し揺さぶりをかけて欲しい」
「え?」
「菜月に揺さぶりをかけて欲しい。あの子が何者なのか、分かるように」
「んな、無茶苦茶な」
「何故?」
「結構ガード固いんで。こちらの話は聞くんすけど、自分のことは絶対に言わないっす。逆に今だと別意味緋炎に対してのほうがガード緩いっすよ?」
「なるほど」
「でも、それして自分の気持ちに気付いちゃ、まずいか。俺で出来るところまで……」
「いや、緋炎にしてもらう。相手の父親はあの男だ」
「……あぁ、あの色魔……って事は!?へっ!?」
 その言葉で二人が不思議そうに見つめてきた。
「あいつってかなりの年増好み?」
「いや、色魔から連想しなさい。因みに保護者がわりの人物は兄になるんだが、その兄とその子供の年齢差は三十ほどだ」
「親子以上かよ……おいおい」
 ぼそぼそと話す二人を菜月は気にした風もない。