翌日、あまりにも緋炎が不機嫌すぎる。
「緋炎に何かあったのか?」
 思わず菜月にまで尋ねた。
「さぁ?あたしも良くわかんない……」
「うるさい!!」
 これでは組ませるどころではない。
「あ、今日、酒で潰しますんで。上手くいけばそこで聞けるかと」
 これは陽光である。
「酒で潰すって……」
「かみさんからも色々言われたんよ。周囲が怯えるくらいだったそうなんで、今日は潰してくれと」
「うわっ」
 菜月が驚いている。
「ただあいつ酒豪なんだよなぁ……」
「ウォッカとかどうですか?」
「菜月ちゃん……それは?」
 手に持っているウォッカがあまりにもミスマッチだ。
「ウォッカですよ?さっき入り口で会った陽光さんたちと同じ歳くらいの女性に渡されたんですけど、これ弱いですよね」
 会った女性の特徴は陽光にも思い当たったのだろう。ため息をついていた。
「それよりも、これ弱いって……」
「この度数じゃ火、つきませんよね」
「そういうために使うものじゃないでしょ」
「いえ……この度数のウォッカって初めて見たので」
 いつも最高度数のウォッカしか見たことがないと。
「菜月ちゃんのお兄さんって酒豪?」
「兄ですか?たしなむ程度です。兄の友人は大のウォッカ好きなんです」
「あっそ……どのあたりをたしなむって言うのか俺、分かんなくなってきてるし。自称だけど緋炎も『たしなむ程度』なんだ。だけど俺からみたらざるを通り越してるよ」
 その言葉に楽しそうに菜月が笑う。
「だと緋炎さんの肝臓は西洋人並みかそれ以上なんでしょうね。あたしは駄目ですけど」
「こら、それは違法」
 高校生で酒を飲んだら違法である。
「ばれました?だから飲んだことがないが本当なんですけど」
 あっけらかんとして話すが、それ以上は話そうとしない。それが菜月だ。

 結局、陽光からの情報は意味の分からないものだった。