勝手なイメージで申し訳ないが、女子によくいそうな喋りをしてくる太雅ときたら……。
でも、なんでだろう……
いつもみたいに言葉に弾みというか勢いが無いように思えたのは。
……気のせい、だよね?
多分そうだ。
「いーじゃーねーかよー。
オレも混ぜてくれたってー」
「……じゃあ長崎くんと仲良くしてたら?」
駄々っ子がするように軽く掴まれた腕をぶんぶん振り回される。
あー、とか、はいはいとか揺さぶられながら私は適当に返事を返しておく。
「……本当にさ、長崎とは付き合ってもいいって思ってる?」
「え……?」
ふと腕を振り回すのを止めて、真剣な顔をした太雅に覗き込まれた。
私の間抜け面が映るほど澄んだその栗色の瞳。
「ま、まぁ……。
ゆくゆくはそうなれば……?
って、まだ分かんないけど……!」
太雅相手になに本音を洩らしているのだろうかと慌てて覗き込む太雅を押し退けた。
その時、ほんのり甘いのにしつこくない香りが鼻先を掠めて……。
普段こんな香水使っているんだ、ふとそんなことを思いながら。
「そーかそーかー。
ついに那菜にも彼氏かー」
「親しげな目線で言ってるけどあたしらそこまで仲良くないからね?」
「美人なくせして意外と男に無関心だしな。
心配だったわけよ、オレは」
「いや、だから……ってもう言うだけ無駄か……」
これっぽっちも出ていない涙を拭う仕草をする太雅に付き合うだけ無駄だとようやく悟る。
「っていうおふざけもここまでにして」
「いやアンタは存在からもうふざけてるから」
「はいはい。
とにかく上手くいくといいな」
屋上の柵に体を預けて太雅は小さい子の背中を押すような優しいトーンで言う。
あんまりにも言われたことの無いトーンだったためにたじろぐ私。
「……そ、うだけど……。
どうなるかは……分かんないね。
まだまだ完全に信用できたわけじゃないし」
「ま、それもそうじゃねーの?
那菜ぐらいの美人なら色々あってそうだしー」
意地悪な笑みを浮かべてからかってくる。



