優しい魔女は嘘をつく


ドアの前まで来ると、私は「ふぅ」と一息つく。



ドアの取っ手に手をかけると、ゆっくりと、静かに、横に引く。




「失礼します」と口パクで言うと、ペコペコと頭を下げながら保健室に入る。




どうやら先生はいないようだ。




よし、ここまでは順調……と、ドアを戻そうと、もう一度取っ手に手をかけようとしたら。






──ピピピピ、ピピピピ。





突如室内に、そんな電子音が鳴り響き、背中に嫌な汗を感じた。



なんとなく、後方から冷たい空気が漂ってくるのが分かった。


手の動きが止まる。



まさか、こんな最悪のタイミングで、偶然、ばったりと合うなんてことはないよね?




ペタ、ペタと上履きが地面を叩く音がする。