優しい魔女は嘘をつく


戸惑う堂本くんに、理解が追い付かない。




泣いてる?私が?




嬉しいような悲しいような、不思議な気持ちだった。



といっても、何が嬉しいのか悲しいのか、上手く表現はできないけれど。




よく考えてみれば、「魔女」が言うように本当に″透明″だったなら、私は一人だということなんだ。



一人の世界には一人しかいない。当たり前のことなのに、なんだか悲しかった。




だからきっと、嬉しいんだろう。




完全な透明は求めてなくて。本当は誰かが近くにいて、話しかけてほしかったのかもしれない。



心なしか、不安だった事が無くなってスッキリした気がした。



「ごめんね」と言って涙を拭うと、堂本くんが唐突に呟く。






「……魔法、だっけ」