優しい魔女は嘘をつく



「ねぇ、堂本くん……」




何度も聞く私にイラついたのか、堂本くんは振り返らずに言った。




「今さらかよ」





本当に?


吐き捨てるように言った堂本くんの言葉が、信じられない。



何故か目頭が熱くなってきて、視界がぐにゃりと歪んだ。なんだろう、……この感覚。





「あれだけ昨日喋っておいて、なに言って……」





そこまで言いかけたとき、堂本くんが急に驚いたように振り返った。



頬に冷たい何かが触れ、知らぬ間に、睫毛に光の粒みたいなものが着いていた。



唇の端に吸い込まれたそれは、やがて口の中に広がっていく。




「なんで、泣いてんの?」