優しい魔女は嘘をつく


本人の気持ちも知らないくせに、どうしてあのときの俺は、あんなことを言ったんだろう。




最低なのは、俺の方だった。




駒森の名前すら覚えられなかったんだから。駒森のためだと思って、嘘ついてたんだから。





でも、違うよな。




もっとお前に笑ってほしかったんだ。だったら、嘘なんかつくよりも、最初から教えてやればよかった。



槙本が嘘つくって決めたとき、やっぱそれはよくねぇよ、って──素直にそう言えばよかった。










最後の言葉が目に留まる。






ようやくそこで、駒森の本当の気持ちを知ったとき。



一気に視界が歪み出して、溢れた涙が文字を濡らした。