花を置いていた理由、っていっても、特別な理由じゃなかった。
どうしてか俺には、駒森は他の奴らとは違う風に見えていた。
ケーキを買い損ねて雨に打たれて帰ってきて、翌日風邪気味で学校に来た日。
保健室で熱を測って、近くの棚に返しに行こうとしたとき。急に足元がフラついて、ぐら、と視界が揺れた。
そこから記憶はなくて、でも後から、駒森が木越と協力して先生を呼んでくれたんだと知ったんだ。
あれからだと思う。
俺のためになんでそこまでしてくれるんだろう。なんで、他の奴らみたいに俺を避けたりしないんだろう。
それらの疑問が募り、少しずつ、駒森のことが気になり始めた。
喜怒哀楽が激しくて、わがままばっかりで。でも、一緒にいるとどこか安心する。
そんな彼女に惹かれていく自分がいるのを薄々感じていた。



