生徒玄関を抜けると、私は振り返ることもなく歩いていく。
「待ってよ」後ろから、蚊のなくような声が聞こえてきた。私は軽く拳を握り、走り出した。
だいたい、関係なかったんだ、私は。
どちらかの味方をしてどちらかを敵にまわして、そればっかりじゃないか。
昔みたいに仲良くしたい。仲立ちをして、こんな微妙な距離を保つだけ。もう、それも、終わりにしたかった。
私は二人のことが好きだ。
だからどちらも傷つけたくない。どちらにも傷ついてほしくない。
そんな気持ちがあるから、きっと、さっきの果夏の話を聞いてしまったんだろう。
そして、果夏はきっと、咲良に謝りたかったんだ。
それで私に、咲良を呼んでもらいたかった。それぐらい、予想はついていた。



