優しい魔女は嘘をつく


でも、結局完全下校時間から一時間半が経っても、堂本くんが教室に来ることはなかった。



もしかして、そんなに大事な話じゃなかったんじゃ……なんて考えていたら、自分が恥ずかしく思えてきたからやめた。




それからしばらく、教室の中をぐるぐるまわった。自分でも何がしたいのか分からなかったけど。





いつの間にか、大雨から小雨に変わっていた。灰の空が放つ弱い光が、教室の中を照らしていた。



電気をつけたいけどスイッチが押せないから、我慢するしかなかった。




そのうち立っているのも疲れてきたから、諦めて壁にもたれて座ることにした。もう完全に定位置だった。




まだ来ないのかな……。




雨の音を聞いてうとうとし始めた、その時だった。





「────!!」




どこかから怒声のようなものが聞こえてきて、驚いて体が跳ねた。