優しい魔女は嘘をつく






それから、私はあることを思い出していた。少し前から、頭にあったことだった。




中学三年生。母と父が死んだ日のこと。





その日は大雪で、朝起きて窓の外を見れば一面が真っ白だった。それこそ、異常な積雪量だったことを覚えている。



その日私の家族は、少し遠くに旅行に行く予定だった。




受験生。勉強ばかりの毎日だ。二人が気を遣って、旅行に行こうと言い出したからだった。






でも、その日の帰り道。




耳をつんざくようなブレーキ音が鳴り響いた直後。



へこんだような潰れたような、ぶつかったような。変な音がしたかと思いきや、前から物凄い衝撃が走った。




私達の乗っていた車に、雪でスリップした車が正面から突っ込んできたのだ。